月経移動
月経移動とは?
月経移動とは、旅行・受験・結婚式・スポーツなど、特別な用事と月経が重なって困るような場合、ピルを内服することで月経を移動させ、月経と重ならないようにすることを言います。
温泉や海に入る予定なのに月経と重なりそうで困った、などという時に、ピルの内服を1日1回ずつ数日間続けることで、月経を移動させることができます。
避妊目的で低用量ピルの内服を行っている方でも、月経の移動は可能です。
また、月経の移動は、ピルの内服開始日をいつにするかによって、月経の開始を早めたり、遅らせたりすることができます。
人によっては副作用の出る場合もあります
ただし、ややホルモン量の多い中容量ピルを使用するため、人によっては倦怠感・眠気・頭痛・吐き気・嘔吐などの副作用が出現することがあります。
また、ピルの内服によって排卵後の状態と同じになるため、体温を高く感じたり、胸の張りを感じたり、少しむくんだりすることもあります。しかし、副作用ではないため安心して下さい。
月経を早める方法
月経の開始から5日目までにピルの内服を始めて、希望する月経の2~3日前まで内服を継続します。
内服を終えてから2~3日で月経が来ます。この方法の利点は、月経を避けたい日にピルを内服する必要がないため、ピルの内服といった煩わしさや、ピルの飲み忘れを心配したりする必要がないことです。
ただし、月経が来てから早めにピルの内服を始める必要があり、ずらしたい月経の一つ前の月経が来たら、5日以内に産婦人科を受診しなければなりません。
月経を遅らせる方法
月経が来ると予想される日の約5日前からピルの内服を始めて、月経を避けたい日まで内服を継続します。
ピルを内服している間は月経が来ませんが、内服を終えてから2~3日で月経が来ます。
月経周期が予測できない場合
ただし、月経周期が比較的不規則で、次の月経が来る日を予想することが難しい方は、この方法による月経移動を行えない場合があります。
その場合、確実な月経移動は、月経を早める方法でしか行うことができないため、早めに産婦人科を受診してご相談下さい。
月経を避けたい日まで時間があれば、早めに婦人科を受診しましょう
10−14日間程度の移動であれば身体への負担も殆どありません。
ただし、14日以上の移動の場合は、途中で不正性器出血を生じたり、内服終了後に月経が来なくて、避けたい日に月経が来てしまったりする場合があります。
よって、時間的に余裕のある時は、月経が来てから早めに受診され、月経を早める方法で月経を移動させると、特別な用事のある期間にピルの内服をしなくて良くなります。
月経移動の注意点
- 1. 内服による避妊効果はないので、避妊目的に使用することは避けて下さい。
- 2. 抗生剤・抗アレルギー剤・鎮痛解熱剤・風邪薬を内服中でも、ピルを一緒に内服して特に問題となることはありません。
- 3. ピルによる吐き気や嘔吐などの副作用を避けるため、就寝前に毎日内服することを心がけて下さい。
なお、内服する時間が3~4時間ずれても問題ありません。 - 4. 頭痛・吐き気・嘔吐といった副作用に対して、鎮痛剤や制吐剤などを用いても、特に問題になることはありません。
- 5. 内服を忘れた場合、1~2錠では特に問題にならず、内服忘れに気が付いた時点で、忘れた分も含めて追加で内服を継続して下さい。
3日以上内服を忘れた場合には、月経が来てしまう可能性が高くなるので、十分注意が必要です。 - 6. 内服中に不正性器出血を認めた場合は、内服を中止せずに内服を続けて下さい。
多くの場合は出血が止まりますが、出血が止まらない場合でも少量出血の状態を保つことができる可能性があります。 - 7. 海外旅行などで時差がある場合でも、就寝前に毎日服用することを心がけて下さい。
しかし、次の内服までに24時間以上時間が空いてしまう場合には、次の内服を早めに行って下さい。一時的に、24時間以内に2錠を内服することになったとしても、特に問題となることはありません。 - 8. 月経移動は、旅行など比較的日数が短い場合は容易ですが、複数の入学試験を受ける受験期間など比較的日数が長い場合は困難なときもあります。
そのような場合、低用量ピルで半年ほど前から月経コントロールを行うことをお勧めします。
月経移動が難しい方
以下のような方は、ピルによる血栓症・乳癌・胎児と新生児へのリスクなどがあるため、処方を控えさせて頂いております。何とぞご了承下さいますようお願い申し上げます。
その他にも、症状や既往歴によって内服できなかったり、十分注意して内服して頂いたりする方もいます。症状や持病のお持ちの方は、早めに受診して相談されることをお勧めします。
- 1. 肥満の方(BMI[体表面積比]が30以上の方)
- 2. 高血圧の方(血圧が160/100mmHgを超える方)
- 3. 重度喫煙者の方(35歳以上で1日に15本以上の喫煙者)
- 4. 乳癌の方(乳癌手術から5年以内の方も含みます)
- 5. 妊娠中や妊娠の可能性のある方
- 6. 授乳中の方
特別な予定が入り、月経の開始を何日か移動させたい方は、是非、早めに産婦人科を受診してご相談下さい。
しかし、いずれの方法でも確実に月経を避けられるとは限らず、時には出血を認める場合があることを十分理解した上で、内服を行って下さい。